2021年04月30日
2021年04月30日

経済産業省が推進するDXとは?企業への導入のメリットについても解説

経済産業省が推進するDXとは?企業への導入のメリットについても解説

21世紀を迎えはや20年以上が経過している現代。

今や国民一人ひとりがスマートフォンをはじめとしたデバイスを持ち、誰でもインターネットを利用して交流や消費活動を行うことが当たり前の時代となっています。

そんな中、経済産業省(METI)はDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進し、これからさらに発展するであろうデジタルの時代に国としても邁進するべく施策を行なっているのです。

この記事では経産省が新たに課題としているDXについてと、一般の企業がDXに取り組む必要性について解説していきます。

1.経済産業省が新たに課題としているDXについて知ろう

経済産業省が新たに課題としているDXについて解説する前に、まずはそもそもDXが何なのかについて解説していきます。

そもそもDXとは何か

DXとは、2004年にスウェーデンのウメオ大学教授、エリック・ストルターマン氏によって初めて提唱された「IT(インターネットなどの通信とコンピューターとを駆使する情報技術)の浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」という概念のことです。

日本でのDXの定義

日本国内では、平成30年に経済産業省が「デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進するためのガイドライン」を取りまとめたことをきっかけにDXへの関心が高まりました。

上記のガイドラインでは、DXを「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、情報とデジタル技術を活用し、顧客や社会が何を求め、何を必要としているかをもとに、プロダクトやサービス・ビジネスモデルを変えていくとともに業務そのものや、組織・プロセス・企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」と、より具体的に定義しています。

なおDXにおける「デジタル」の定義は「複数の技術革新がつながり(コネクティビティ)の向上という意味で結合されていくこと」という、J.Louks,etal.,DigitalVorttex,DBT Center Pressのものが頻繁に引用されています。

「2025年の壁」とは

DXの実現のために超えなければならない課題やその打開策を明らかにするため、経済産業省が設置した機関で議論された内容が「DXレポート〜ITシステム『2025年の壁』の克服と、DXの本格的な展開〜」(以下「DXレポート」)というタイトルでまとめられています。

「DXレポート」では、ガイドラインの策定が勧められているとともに、多数の企業においてシステムが老朽化したり、ブラックボックス化(内部構造や動作原理が解明できない状態になること)したりしている例があると述べられています。

なぜブラックボックス化が起こるかというと、システム構築の担当者が退職したことや自社の業務に対応するよう細かに作り変えた結果、プログラムが複雑化してしまったことなどが理由に挙げられているのです。

「DXレポート」は老朽化・ブラックボックス化したシステムが環境の変化や新事業に不適合を起こす、またはシステムの保全・活用のために膨大な費用がかかるなどの問題を生みだし、DXの推進を阻害していると警鐘を鳴らしています。

さらに既存のシステムの問題をそのままにしておくことは、DXを不可能にするばかりか、2025年以降、年間で最大12兆円の損失が生まれるかもしれない、と警告しているのです。

これが「2025年の壁」なのです。

「2025年の壁」とは

DXにおける2025年問題を生き残るためにはデジタルとセキュリティの理解が必須である

2.経済産業省DXで日本社会はどう変化するのか?

まずDXで、日本社会はどう変化するのかについて国民の側からの立場から解説していきます。

行政手続きが飛躍的に簡単・便利になる

政府全体では行政手続きは年間数億件行われているといわれています。
その手続きのデジタル化はこれまでもある程度は進められてきました。

しかし多くのケースでは紙からPCの画面になったのみで、情報の分類・入力・確認など、本質的に作業量は変わっていません。
行政のサービスを利用・申請する企業や国民、そして実際の業務を行う行政の職員にとっても、いわゆる“お役所手続き”によっていまだ過大な負担となっていました。

そのような状況を一挙に改善するため、経産省がDXによる変革で目指しているのは、デジタルによる「オペレーションの最適化」です。

具体的に例を挙げると、何度も同じ情報を異なる手続きで入力する必要があったものが一回だけで済む「ワンスオンリー」や、関連する手続きを一括で終わらせる「ワンストップ」などです。
これらの最適化で、手続きにかかっていた手間と時間が劇的に削減可能になります。

また民間のサービスとも連携することにより、行政手続きのためにあらたに書類を作成する手間を省くこともできます。

さらに申請時の添付漏れや記載ミス等はシステムで自動的に発見され、窓口での煩雑なやりとりも必要なくなるのです。

デジタル・トランスフォーメーションは面倒な手続きを削減し時間を有効活用できるよう、行政かを起点とした生産性革命を国として実現していくのです。

デジタルマーケティングを政策に活用

次に、DXで日本社会はどう変化するのかについて政府の側の立場から解説していきます。

企業などが行政サービスを利用する際、申請情報の中にはさまざまな政策立案のヒントとなる要素が詰まっていると考えられます。
しかし書類で行われた手続き情報はデータとして管理することが非常に困難なため、情報源としてはほぼ使用不可能な状態といってよいでしょう。

またデータの部署間での共有が不完全なため、組織内の協力体制によって圧倒的に効果の高い政策立案を実現する機会を失っているのです。
企業や国民を経産省のクライアントにたとえると、クライアントが何を求め必要としているかをデータから分析し、それにもとづいてクライアントに商品(政策)を届けるという「マーケティングの基礎がふまえられていない」ということになります。

また仮に数多くの制度や支援策があったとしても、溢れる情報の中で「使えるもの・最適なものがどれなのかがわからない」という意見もあります。

あらゆる分野でデジタル化が当たり前のこの時代。
その時代の中でデータ活用の体制が整っていない状況下で、政策を決めていくためのテクニックの進歩は残念ながら足踏み状態といっても過言ではありません。

このような状況から脱却するためには、まず行政の手続をデジタル化し、申請された情報をさらにデータ化するために大量に集める必要があります。

さらにそのデータを分析可能にするため、活用しやすいシステムを築くことは間違い無く急務となるでしょう。

そしてデータを組織の全体で部門を超えて共有・活用することで、政策のクライアントである企業や国民のニーズや置かれた環境の分析をはかり、産業界ではもはや常識であるマーケティングや、パーソナライズ(顧客一人ひとり個別の趣味嗜好に合わせてコンテンツを提供するマーケティング手法)を行政サービスでも行うことが必要とされます。

またこれまで、経産省がアプローチできていなかった顧客層も含め政策をプッシュ型(決めたタイミングでユーザーに情報を伝えていく方法)で届けていくことにチャレンジしていくことが求められているのです。

経産省がアプローチできていなかった顧客層も含め政策をプッシュ型(決めたタイミングでユーザーに情報を伝えていく方法)で届けていくことにチャレンジが必要

「日本における企業のデジタルトランスフォーメーション調査(2020年度)」によるとDXに着手している日本企業は74%いるという。
新型コロナによってよりDX実施が加速している

3.DXが企業に必要な理由とは

企業にDXが必要な理由の一つには『2025年の壁』とは、の項で既に述べてきたようにシステムの老朽化やブラックボックス化からの脱却が必要であることが挙げられますが、その他には以下のようなものがあります。

デジタル化によってサービスを拡大する

現在はありとあらゆる分野の産業でアマゾンや楽天・アリババのようなインターネット上の参入者が台頭し、続々と新たなプロダクトやサービス・ビジネスのモデルを売り出していく時代です。

この時代の流れに追いついていくためには、DXの推進は不可欠であることは間違いありません。

消費者の価値観の変化

現代社会において大半の消費者が所有するために商品を購入することよりも、その先にある購入した体験で得られる満足感や生活さらに充実させることを重視する流れになってきています。

企業側には、この時代の流れに合致した価値ある経験・体験を提供するビジネスモデルへの移行のため、システムだけではなく業務や組織全体で変革することが必要とされているのです。

消費者の価値観の変化に伴う業務システムの変化

AIなどの技術発展を背景に、デジタル技術の利活用が企業及び現代社会にとって事業拡大の鍵となっている

4.まとめ

以上、経産省が新たに課題としているDXについてと、一般の企業がDXに取り組む必要性について解説してまいりました。

世界レベルで見れば日本におけるDXへの取り組みはまだ始まったばかりといわれています。
しかし試行錯誤を重ねることにより”さらなる発展を目指す”新たな経済成長チャンスの時代が到来しているとも考えられるのです。